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Director

表現したいのは、日常のちょっと先。
見た人が、明るく元気になるようなものづくりをしたい。


淺田 友梨
Yuri Asada

進学も就職も、中島信也さんを追って


子どもの頃の思い出や、今の仕事につながることがあれば教えてください。
私が中学生くらいの頃だったと思いますが、奈良美智さんの絵に刺激を受けて、ファインアートの道から美大進学に興味を持ち始めました。何か他の関わり方を通して、人の気持ちを明るくするようなことを追求したいと考えるようになりました。

その後、CM制作の道に進んだのは何かきっかけがありましたか?
予備校に通っている時に出会ったのが中島信也さんです。美大のオープンキャンパスに行った際、盛り上がっている教室があったのでのぞいてみたら信也さんがCMの授業をしていて、映像で面白さを追求したり、温かさや笑いを届ける様子を見て魅了されました。武蔵野美術大学、そしてデザイン情報学科を選んだのは「信也さんの授業が受けたい」に付きますね。

就職も東北新社と、まさに中島信也さんの背中を追っていますね。
とはいえ、信也さんの授業を受講できるのは3年次からだったんです。そこで勇気をもって授業にもぐりこんで、授業後に信也さんを追いかけて「私1年なんですけど、オープンキャンパスで信也さんの授業を見てこの学科に入ったんです!」と勢いに任せてアピールして、そこで少しお話をさせていただきました。
CM作りに関わりたい、できたら東北新社がいいと思っていたものの、当時東北新社は企画演出で2人くらいしか採用していなかったので、諦め半分で受けましたね。その分気楽というか、実技でコンテを書くときも楽しんでやれたのがよかったかも。運が良かったです。

入社後は広告企画制作などを手掛けている(株)17に出向という経験をされています。
(株)17のような代理店側だと、広告や企画に対してもっと広い目で見ながら、CMも、その背景の戦略も含めてトータルで関わっていくことが必要になります。「こう見えるからこう売れる」というロジックや、プレゼンの際の言葉の表現など、そのあたりは17で鍛えていただきました。
松尾卓哉さんに従事していたのですが、松尾さんが一緒に仕事をされる方は重鎮のディレクターさんだったり、映画も手掛けるような著名な美術デザイナーさんだったりするので、そういった方々のお仕事を間近で見ることができたのは本当にいい思い出です。

キャラクターには丁寧な裏設定を用意し、
キャストには恋する気持ちで向き合う


東北新社に戻られてからのお仕事を教えてください。
地方CMを何本か手掛け、読売新聞の『タクミと本紙』が地上波としては初CMになります。あと、割と女性や子どもが出演する広告が多かったので、男性のタレントさんとお仕事させていだたいたのも初めてでした。企画から色々提案して、伝えたいことの表現や斎藤さんの表情を引き出し、きれいにまとめられたかなと思っています。
読売新聞『タクミと本紙』シリーズ

リンククロスのWEBCM『わたしとおっぱいさん』は、女性なら「かわいい!」と言ってしまう絵作りと世界観のCMでした。
この作品はディレクターである私を含め、代理店さん、プランナー、制作チーフ、美術とスタッフを女性で固めて臨みました。観て頂く方に、「あるある!」という共感や、「私だったらどうするかな?」と自分事にしてもらうことを大切にしたいなと思って、その要素を入れるよう工夫しました。
私、登場人物の裏設定を作るのが好きなんです。この作品の女の子の場合、小さい頃はよく外で遊んでいて、勝気な性格。その反面はじめてブラジャーを買うから乙女の要素も入れて、成長して実は海外のゴシップが好きで…という具合に。



裏設定が細かいですねー(笑)!
この作品のあとに他の作品を撮影したときも、裏設定でこのカップルの出会いからなれそめを書きましたね。キャスティングの方にも共有して、「彼女は外資系に努めていて、転勤先でイギリス人の彼に出会って国際結婚。なので男性は外タレでお願いします」などとお願いして。その方がイメージなどを含め、伝わりやすいのではないかなと感じています。


『サントリー水の歌」は、WEBに加えてイベントで流すムービーでは、ゆりやんレトリィバァさんの力強くもかわいらしい映像と曲が印象的です。
「ぬいぐるみの動物と絡んでください」とお願いしたら、ムービーにも入っている、なめられてくすぐったがる演技をしてくださったり、他にも色々やってくださって、泣く泣くカットしたシーンも多くて…。ゆりやんさんの、楽しませようというプロの姿勢のおかげで、現場も楽しかったです。最後に握手させていただいたこともいい思い出です。



『カゴメ 野菜生活 100 レギュラー「ベジトレって?」』などもそうですが、女性や子どもをかわいく撮るような広告が多いのかなと感じました。
確かに多いかもしれません。かつ、撮るならその人の一番いい表情を撮りたいので、どこがかわいいのかを探ります。好きになるというか、恋するような感覚なんじゃないかな(笑)。好きな人のかわいい表情なんて、絶対見たいじゃないですか。

カゴメ 野菜生活100 レギュラー 「ベジトレって?」


淺田監督の人柄的に、クールに演出されているのかなと思っていました。
感情に波が立たないよう、一定の気持ちでやろうと心がけていますが、デジコン見ながらひとりごと言っちゃうときとかあります。必要に合わせて「もう一回いこー!できるよー!」とか松岡修造さんみたいになることもありますし(笑)。
Kida

見て元気になれるような
あたたかくてほっこりとした世界観を表現したい


先ほど、キャスティングの際に裏設定を書くというお話もありましたが、選ぶ人の傾向などはありますか?
すごい目立つ子を選ぶわけじゃないと思います。染まっていない人…サラッとした人がいいなというか、電車乗ってすれ違いそうな人とか。テレビに出そうという感じではなく、身近に居そう、友達になれそうな雰囲気の方の方が、見る人が自分を投影できる気がしています。

好きな映像作品やジャンルは?
前はターセム・シン監督の作品はよく見ていました。彼の作品で衣裳デザインを手掛けている故・石岡瑛子さんの作品も好きですし、あとは中島哲也さんとか、グラフィカルだったり見た目にインパクトのあるものはよく見ていました。80年代のSFモノも好きで、『スター・ウォーズ』はもちろん『ストレンジャー・シングス 未知の世界』とか、冒険の物語はのめりこんで追いたくなります。
でもいざ自分がやるときはその表現ではないものを探っていて、日常のちょっと先にある、あたたかくてほっこりとした世界観だったりしていますね。ここはわりと無意識なのでバランスを取っているのかもしれないです。

今後作りたい作品について教えてください。
「観て元気になる」というのは私の中でずっと大切にしていることで、やっぱりそこはやっていきたいですね。テレビCMをはじめ、映像を媒体とした広告ってなくならないと私は思うんです。コンテンツの間の箸休めであり、15秒・30秒でパッと見れる、ちょっとした非日常というか夢というか。「スキップしようとしたら、面白くて見入ってしまった」。「たまたま見ていたらちょっとわらっちゃった、泣けちゃった」ってあると思うんです。それって出会いですし、その出会いがいいものになるよう、見た人の心に残るものを手掛けていきたいです。

ありがとうございました。
 
淺田 友梨
Yuri Asada

2013年武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業、同年東北新社入社。 2015年5月にディレクターデビュー。 2016年4月~2017年2月まで(株)17に出向。

<主な作品>
リンククロスWEBCM「わたしとおっぱいさん」2018/05~
読売新聞「タクミと本紙」
カゴメ野菜生活100「ベジトレって?」