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Director

ディレクターという仕事が本当に好きで、
心から楽しんでいる


松岡 芳佳
Yoshika Matsuoka

きっかけはCMで流れたある言葉


松岡監督の幼少期~学生時代についてお聞かせください。
私は一人っ子でお家遊びとかあんまり得意じゃなくて、外でずっと地元の友達と元気に遊びまわっている子でした(笑)。
学生時代はスポーツをしていて、小学校では器械体操、中学と高校でバトミントン、大学ではラクロスとその都度そのスポーツに夢中になっていました。ラクロスは大学の4年間部活でやってきて、プレッシャーだらけの中でずっとやっていたので、精神面で鍛えられてタフになりました(笑)。

何がきっかけとなって映像分野を志したのでしょうか?
高校の頃から広告などのコピーが好きで、CMに出てくる言葉などをノートに書き留めたりしていました。田中嗣久監督のCMで「人生はマラソンだ、でも本当にそうか?」という言葉を目にして自分の中の考え方をガラッと変えられたというか、自分の軸になっていたものを見返すきっかけになりました。このCMに出会って短い時間での映像や言葉でこれだけ心が動かされるようなCMを作ってみたいと思ったので映像制作の道に進みました。

大学を卒業後、博報堂プロダクツの演出部に入社されていましたね。
インターン採用だったんですが、そこで企画出しを体験して「こんなに楽しい仕事があるんだ!」と思いました。実際に入社して最初は打ち合わせに出られなかったり、企画もなかなか発表されなかったり、悔しい思いもしました。そもそも美大や芸大などで映像に特化した勉強をしてこなかったため、凡人コンプレックスはすごくありました(笑)。でも仕事に対してはインターンの時と比べて大きなギャップも無く、すごく楽しい仕事だなってずっと思っていました。

経験や悔しさを糧に掴んだ作品賞


2019年の JACリマーカブルでは作品「最期の言葉」で永井聡賞を受賞されました。
その年のお題が「Beginning “始まり“」でした。始まりは誰かにとっての終わりだけれど、誰かにとっての始まりでもあるという考え方があって、それを終わりと捉えるか始まりと捉えるのかはその人次第だということをベースに何かできないかと思いました。元々こういった作品にしたいと思っていたわけではなくて、課題から逆算して最初にテーマ・軸を決めてから誰がどう言ったら面白いのかなどを考えました。普段から来世にワクワクするぐらいの死に方って良いなとぼんやり思っていて、今の人生に後悔ややり残したことなんてないから早く次の人生もっと楽しみたい!と思える人生でありたいという自分の考えをちょっとだけ出せたかなと思います。
1,2年目の時は社内選考で落ちていてリマーカブルに出すことさえできなかったので、賞を頂けてとても嬉しかったですし、さらに永井さんの作品が大好きで憧れの方だったので、そんな永井さんから賞を頂けたことが本当に嬉しかったです!

演者のおばあちゃん役の方がとても印象的でした!
おばあちゃん役の方がすごく良くて!オーディションで決めたんですがダントツでよかったです!私が関西出身なので親戚の人が喋る言葉が関西弁以外ありえなくて(笑)。標準語だとどこかセリフっぽく聞こえてしまうので、関西の方ではなかったのですが、何回も関西弁を練習してもらいました。


2019 JAC AWARD 永井聡賞 「最期の言葉」

2019年のBOVAでは作品「妙なアルバム」で協賛企業賞を受賞されました。この作品ではどういったアイデアで作られたのでしょうか?
BOVAは元々は社内選考で落ちていたこともあり、 JACの時よりも全く通ると思っていなかったので、最初電話が来た時はなんの話かわからなかったです(笑)。
BOVAは手作り感のある作品が多いので自分で出来るとは思ってましたが、どうしようか迷っていて、、。でもやらなかったら絶対後悔するというか自分に負けた気になると思って(笑)。年末に実家へ帰った時に企画して、家族旅行でポルトガルへ行ったときに現地のホテルで撮りました(笑)。写真も本当のアルバムを引っ張ってきて、祖母の写真に味があって表情とかが面白かったんです。それでちょっとこれなんか出来そうだなと思って夜に祖母に手伝ってもらって、iPhoneでアルバムをめくりながら撮りました。賞を頂けて祖母もすごく喜んでくれました!

富士フイルム 妙なアルバム


まさかのポルトガルですか!(笑)
企画のアイデアはどんな時に生まれますか?

不意に思いつくとか言いたいんですが、本当に時間がかかるタイプなので思いつきみたいにはいきませんね(笑)。何日もかけて何周も回って企画の肝となる部分を考えて、そこから構成を考えて地道にやっていくタイプです。企画で何個も出さないといけない時はずっと頭にそのことがあるので、生活している中でお風呂に入っている時などに思いつくことはあります。たまに夢の中で企画していることがあって、起きた時に「できた!」と思って書いたらめっちゃしょうもなかったっていう時がありました(笑)。

ディレクターとして映像作品を作る際の原動力・心がけなどはありますか?
本当にこの仕事が好きで、パッと頭の中で閃いたことが形になっていく瞬間が一番楽しくて、意識して原動力にするなどと自分で設定しなくても楽しいから頑張れると思っています。現場で自分の思った通りに進むのも楽しいですし、女優さんや俳優さんが自分の思っていた以上の事をやってくれた時や違う方向に良い正解を見つけ出してくれた時にもすごくワクワクして気持ちがノッていきます。先輩の現場に同行させて頂いた時は「私だったらこういう風にしたい」というようにイメージすることを絶対にしなさいと言われていて、現場でどんどん疑問や意見を言わせて頂きました。それが採用されたら嬉しいですし、却下されたら「なんでだろう?」って考えて、大御所の監督さんの現場に行ってもそれを絶対忘れないようにしていました。

Inaba




感情の変化を捉えたエモーショナルな作品作りを


松岡監督にとって私たちキャスティングに求めることはどんなことでしょうか?
ただ紹介したりオーディションして下さるだけじゃなくて、演者の良い所や弱点を素直に教えて頂くなど、私が迷っていることに対して演出的な意見を言って下さる方は結構嬉しいですね。私がオーディションをしている時に手伝ってくれるというか、「こうやってみた方がいいかもね!」などと間に言って下さると、一緒にオーディションを作ってくれている感覚を持ててやりやすく感じます。演者の些細な情報をちょっと言って下さるだけでも選びやすくなるので、とても有難いです。

決め手の後押しをしてくれるということですね。
オーディションでは演者のどういったところを見ていますか?

オーディションは私のディレクションを試す機会と捉えています。突然の思いつきで言ってみたオーダーに対してどれくらい応えてくれるか、言わされている・やらされている感じが無くて自然に笑えるか、とかそういった部分を見ています。
笑えるシチュエーションや美味しいと言えるシチュエーションを作るときに、自然に近くてあまり役を作っていない人に魅力を感じます。子供の場合はその場を楽しんでくれているかどうかを大事にしていて、こういう仕事をするのが好きなんだろうなっていう子から選んでいきますね。現場を楽しんでくれる子とか!

今後やりたいお仕事や夢などがあればお聞かせください。
今、”自分たちが見ている世界の中でどう切り取ったら面白いか”など人の感情にすごく興味があるので、エモーショナルな作品を作ってみたいです。少しの目の動きや動作とか感情の変化を捉えられる監督になりたくて、身近にあるものをどう撮っていくかにこだわるような演出をしていきたいと思っています。
最近PVを撮る機会があったんですが、PVは元の歌詞とかメロディはあるけれど映像はない段階でディレクションをしていくので、進め方がちょっと特殊だなと思いました。コピーだけあって映像はそこから付け足していく感じで、どういう表現をするかは監督が考えることが多くてそこが面白かったです。今までやっていたCMの企画や演出お仕事とはちょっと違うなと感じたので、そういった作品にもトライしていきたいです!

繊細な動きを切り取って感情の変化を表現していく、そんな松岡監督のエモーショナルな作品に今後注目していきたいと思います!
本日はありがとうございました!

 
松岡 芳佳
Yoshika Matsuoka

1994年 大阪府生まれ。
2017年 博報堂プロダクツ入社。


<受賞歴など>
2019年 JAC AWARD 永井聡賞 受賞
2019年 BOVA 協賛企業賞 受賞